絲山秋子の小説おすすめ10選｜人気の芥川賞作家！短編も人気

絲山秋子は小説家であり、大学の非常勤講師・客員教授・ラジオパーソナリティと、多彩な顔を持つ作家です。大学を卒業後、住宅設備機器メーカーに営業職として就職しますが、1998年に躁うつ病に罹り入院してしまいます。

その入院中に小説を執筆し始め、2003年に『イッツ・オンリー・トーク』により小説家デビューを果たします。読書量が幼少期よりかなり多く、さまざま小説を読破しています。自身でその年に読んだ本の中からよかった作品を、「絲山賞」としてブログに発表しているのもユニークです。

ここでは、絲山秋子のプロフィール・代表作・小説の特徴・おすすめ10選などを紹介しますので、絲山秋子の小説に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

【絲山秋子プロフィール】

• 本名：西山秋子
• 生年月日：1966年11月22日
• 出身地：東京都
• 職業：小説家
• 最終学歴：早稲田大学政治経済学部卒
• ジャンル：小説
• 代表作：『沖で待つ』『袋小路の男』『薄情』
• デビュー作：『イッツ・オンリー・トーク』

絲山秋子は小説以外にも、高崎経済大学非常勤理事・非常勤講師、法政大学の客員教授、ラジオパーソナリティなども務めています。現在のところ結婚はせず、高崎市で一人暮らししています。

【絲山秋子の受賞歴】

• 2003年：『イッツ・オンリー・トーク』で文學界新人賞受賞
• 2004年：『袋小路の男』で第30回川端康成文学賞受賞
• 2005年：『海の仙人』で第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞
• 2005年：『沖で待つ』で第134回芥川賞受賞
• 2016年：『薄情』で第52回谷崎潤一郎賞受賞

絲山秋子は2003年に文學界新人賞受賞により小説家デビューしています。受賞作の『イッツ・オンリー・トーク』は、「やわらかい生活」と題して映画化されています。

『イッツ・オンリー・トーク』は、文學界新人賞を受賞した絲山秋子のデビュー作です。OL時代に心の病気を患って入院していた絲山秋子の私小説的な作品でもあります。本作の主人公の優子も精神病を患っています。しかし医師の両親は優子の病気を認めようとしません。

引っ越しの朝に恋人にフラれた優子は、その後に何人かの男性と関りを持ちながら、日々を過ごしていきます。本作では表題作のほかに『第七障害』が収録されています。初期の絲山秋子の作品をぜひ手に取ってみてください。

『沖で待つ』は、2005年に芥川賞を受賞した作品です。文庫本には表題作の『沖で待つ』と『勤労感謝の日』『みなみのしまのぶんたろう』の3編が収録されています。『沖で待つ』と『勤労感謝の日』は、総合職採用の女性の物語です。彼女たちの不安や焦りが共感を持って伝わってきます。

また、小説の中に登場する男性上司の心ない言動は、現代女性にとっても辛く胸に刺さるものがあります。総合職で働く女性にぜひ読んでいただきたい作品です。

『袋小路の男』は、12年間一人の男性を思い続ける女性の物語です。文庫本には表題作と『小田切孝の言い分』、『アーリオオーリオ』の3編が収録されています。『袋小路の男』と『小田切孝の言い分』は連作小説で、この2編で小田切孝と大谷日向子の12年間がつづられています。

12年もの長い期間、恋愛感情を持ちながらも指一本触れない関係が、もどかしくもあり純愛を感じる2人の関係性が新鮮です。読む方によってとらえ方が変わってくるのも絲山秋子の小説の特徴です。

絲山秋子は、大学卒業後に総合職で住宅設備メーカーに就職しています。会社員生活を経験しているので、小説の主人公にその経験を投影しています。そのため総合職で働く女性読者の気持ちを絲山秋子自身が的確に表現してくれます。

同世代の働く女性の気持ちを理解し、勇気を与えてくれるのが大きな特徴です。会社組織の中で男性と同等に働いている女性の本音が垣間見れます。

絲山秋子の小説は、日常の中の人々の気持ちを綴っているものが多いので、どこか人とは違っていてもその日常に幸せを感じている人に刺さる物語です。

恋人でもなく夫でもない男性を一途に愛し続ける女性、適齢期とされる年齢を過ぎても独身の人々、近しい人の突然の死など、一般的には少数派の人々への寄り添い方や気持ちの表現が秀逸です。

絲山秋子自身が現在も独身であることから、小説も独身の男女が出てくるものが多い傾向です。人生はそれぞれですが、理解できるかできないかは別として自分とは違う生き方の人には興味がわくものです。自分の身に置き換えたり、自分とは別の人生を歩む人々の気持ちを小説の中で味わったりできるのも絲山秋子小説の魅力と言えます。

絲山秋子の小説を読むと、「孤独」とは何かを考えさせられます。結婚せずに一人で生きていくのを選択した人々は、それを孤独とは考えておらず孤独自体を否定していません。それは清々しくもあり、どこか物悲しさを感じさせます。

絲山秋子の小説では親しい人の死を扱っている作品がありますが、人は死んでもかかわった人々の心に残るものだと感じさせてくれるので心が救われます。

絲山秋子は1年間に読んだ本の中で、最も面白かった本を「絲山賞」としてブログで発表しています。絲山秋子自身がブログの企画として行っている賞ですが、受賞した本は帯に書かれるなど影響力があります。

【歴代の絲山賞受賞作】（2004年～2021年）

• 第1回　古処誠二『接近』
  　　　  町田康『パンク侍、斬られて候』
• 第2回　赤染晶子『うつつ うつら』
• 第3回　多和田葉子『海に落とした名前』
• 第4回　筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』
• 第5回　鹿島田真希『ゼロの王国』
• 第6回　ドナルド・キーン『日本人の戦争　作家の日記を読む』
• 第7回　木下古栗『いい女vs.いい女』
• 第8回　松浦寿輝『不可能』
• 第9回　由井鮎彦『会えなかった人』
• 第10回　小川洋子『ことり』
• 第11回　宮部みゆき『荒神』
• 第12回　臺弘『誰が風を見たか 増補版 ある精神科医の生涯』
  　　　　小川義文写真集『MOMENT OF TRUTH』
• 第13回　都築響一『圏外編集者』
• 第14回　前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』
• 第15回　内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』
• 第16回　杉山雅彦『ニッポンのはたらく人たち』
• 第17回　西崎憲『未知の鳥類がやってくるまで』
• 第18回　藤沢周『世阿弥最後の花』

絲山秋子の最新刊は、2022年出版の『まっとうな人生』です。2005年に発表された『逃亡くそたわけ』から十数年後の物語です。登場人物の花ちゃんとなごやんは富山県で再会し、今はお互いにそれぞれ家庭を持っています。物語はコロナ禍に生きる人々を描いています。

まず『逃亡くそたわけ』を読んでから『まっとうな人生』を読むのがおすすめですが、どちらか一方だけ読んでも十分楽しめます。以下に読書の際の便利グッズを紹介するので、ぜひご覧ください。

絲山秋子の小説は、読む方の置かれた状況によって感じ方が異なるのが魅力です。特に女性読者の心に刺さり、共感する方が多くいます。絲山秋子の文章は嫌味がなくさらりと読めるので、もちろん男性にもおすすめです。絲山秋子の小説で平凡な日常生活の幸せを感じましょう！

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