文學界新人賞受賞作おすすめ8選｜傾向や受賞作紹介！『N/A』や映画化された『影裏』

文學界新人賞は、文芸春秋社が1年に1度募集する純文学の公募文芸新人賞です。受賞作は、文芸誌「文學界」の5月号に掲載されます。規定枚数は70～150枚で、他の文芸誌の新人賞に比べると短めなのが特徴です。

文學界新人賞は、1957年の第3回～2014年の第119回までは、年に2回公募されていました。そのため狭き門がさらに狭くなり、もともと受賞作なしの回もありましたが、年1回となった現在でもそれはかわりません。

ただ文學界新人賞は、芥川賞に最も近い賞だと言われ、実際に文學界新人賞の受賞者は芥川賞を受賞している作家が多くいます。ここでは、文學界新人賞の特徴・文學界新人賞受賞作の人気作品・おすすめ8選などをご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

文學界新人賞は、文芸春秋社が発行する文芸誌「文學界」が1年に1度公募する新人文芸賞です。規定枚数は70~150枚で、締め切りは9月末で受賞作は「文學界5月号」に掲載されます。受賞者には賞金50万円と記念品が贈られます。

応募は原稿用紙を郵送する方法だけでなく、WEBサイトでも応募が可能です。第1回の受賞作は、石原慎太郎の『太陽の季節』です。受賞者には、作家以外にも俳優・モデル・評論家・翻訳家など、他分野で活躍する方が多くいます。

文學界新人賞の特徴1つめは、「文學界新人賞の歴史」です。文學界新人賞は1955年からスタートしました。上でもご紹介していますが、第3回から第119回までは年に2回公募されていたので、回数はとても多くなっています。

2022年で第127回を迎えます。第1回の受賞者である石原慎太郎を始め、多くの有名作家を輩出しています。第4回受賞の城山三郎、第7回受賞の深田祐介、第51回受賞の木崎さと子、第64回受賞の鷺沢萠、第80回受賞の青来有一などが受賞者です。

文學界新人賞の特徴2つめは、「文學界新人賞受賞の傾向」です。文學界新人賞は、歴史のある新人文芸賞で、正統派作品が受賞する傾向にあります。正統派とは、物語が大きく展開しない・日常の一コマを切り取った作品・緻密で整った文体の作品などです。

文學界新人賞は、規定原稿用紙の枚数が他の文芸賞より少ないので、無駄な文章をそぎ落としたものが求められます。できるだけ簡潔に文章を書ける作家が高評価を得る傾向にあります。

文學界新人賞の特徴3つめは、「文學界新人賞の受賞者で芥川賞を受賞した作家と作品」です。以下に作家と作品をご紹介します。

• 石原慎太郎『太陽の季節』
• 南木佳士『ダイヤモンドダスト』
• 吉田修一『パーク・ライフ』
• 吉村萬壱『ハリガネムシ』
• 長嶋有『猛スピードで母は』
• 絲山秋子『沖で待つ』
• モブ・ノリオ『介護入門』
• 木崎さと子『青桐』
• 青来有一『聖水』
• 藤野可織『爪と目』
• 円白塔『道化師の蝶』
• 楊逸『時が滲む朝』
• 砂川文次『ブラックボックス』
• 沼田真佑『影裏』

人気の文學界新人賞受賞作1つめは、『影裏』です。会社の異動で盛岡にやってきた一人の孤独な青年・今野が、社内で一人だけ心を通い合わせる友人ができます。その友人・日浅とは釣りに行ったり、日本酒を酌み交わしたりと親交を深めます。

そんな中、東日本大震災が起こり、日浅は行方不明になります。日浅は死んだのではないかと噂され、彼を探しに実家に行った今野は、日浅の本当の顔を知り混乱します。本作は震災・LGBTなども扱われた作品です。人の心の闇に触れ戸惑った経験のある方におすすめです。

人気の文學界新人賞受賞作2つめは、『N/A』です。N/Aとは、not applicable（該当なし）の略です。本作は、自分の気持ちが周囲の人に理解されなくて、自分と同じ気持ちの人を探しても「該当なし」な女子高生・まどかの物語です。

まどかが食べ物を食べないのは「痩せたいから」ではなく「生理を止めたい」からです。自分の身体から出る血を見るのが嫌なだけです。女性とつきあっているのも女性しか愛せないのではなく、「かけがえのない他人」を求めているからです。周囲から理解されないと苦しんでいる方、ぜひ読んでみてください。

人気の文學界新人賞受賞作3つめは、『オブ・ザ・ベースボール』です。荒唐無稽な不条理小説で、とらえ方は読者の数だけある小説です。物語の舞台は、「ときどき空から人が降って来る町」です。しかし降って来る人を助けるのではなく、バットで撃ち返すレスキュー隊がいて、いつもレスキュー隊はバットを持ち歩いています。

純文学作品の贈られる文學界新人賞受賞作ですが、SFの香りがする作品です。著者・円城塔の独特な世界観に浸ってみたい方はぜひ読んでみてください。

文學界新人賞の審査員は、4～5回に一度、審査員が変わります。有名大物作家や文芸評論家が審査員を務めており、代表的な初期の審査員・中期の審査員・1995年以降の審査員をご紹介します。

• 初期の代表的な審査員
  伊藤整・井上靖・武田泰淳・平野謙・吉田健一・野間宏・阿川弘之・梅崎春生・遠藤周作・曽野綾子・安岡章太郎・江藤淳・石原慎太郎・吉行淳之介など
• 中期の代表的な審査員
  中上健次・宮本輝・津島佑子・山田詠美・木崎さと子など
• 1995年以降の審査員
  島田雅彦・川上弘美・角田光代・花村萬月・円城塔・川上未映子・綿矢りさ・長嶋有・金原ひとみ・村田沙耶香など

純文学には、五大新人文学賞があります。群像新人文学賞・新潮新人賞・すばる文学賞・文藝賞、そして文學界新人賞の5つです。どの賞も個性があり、応募する方はそれぞれの特徴を把握して応募する必要があります。

賞金はすばる文学賞は100万円で、その他は50万円です。締め切りは、新潮新人賞・すばる文学賞・文藝賞が3月31日で、群像新人賞は10月31日です。選考委員や過去の受賞者の作品を読むとその文芸賞の特徴が掴めます。文學界新人賞は、純文学色が特に強いと言われています。

文學界新人賞は、短・中編小説がメインの文学賞です。受賞作は、純文学色の強い作品が多いですが、短めなので読みやすいと言われています。歴史は五大新人文学賞の中でも古く、芥川賞受賞者も多く輩出している新人文学賞です。あなたも歴史ある文學界新人賞受賞作を読んでみましょう！

こちらもあわせてご覧ください