武者小路実篤のおすすめ小説8選｜代表作や名前の読み方まで詳しく紹介

武者小路実篤（むしゃのこうじさねあつ）は、1885年(明治18年)に生まれ1976年(昭和51年)90歳で亡くなるまで、数多くの作品を作り出してきました。明治・大正・昭和の近代文学史の中で、白樺派といわれるひとつの流れがありました。

白樺派は、同人誌『白樺』に自分の作品を掲載したり、考えに賛同したりする人たちをいいます。武者小路実篤は、その立ち上げから参加します。白樺派は、現実の苦悩や自己否定の少し暗い印象の自然主義に違和感を持ちます。そこで、自由で自己肯定感にあふれた作品を発表していきます。

ここでは、ポジティブさや自己肯定感の高さを感じる武者小路実篤の作品をご紹介していきます。現代を生きる私たちにも、明るく前向きな気持ちにさせてくれるもばかりです。

武者小路実篤はペンネーム？と思う人もいますが、こちらは本名です。一般的には「むしゃのこうじ」と読みます。ただ、本人は「むしゃこうじ」と読み方を変えています。白樺派がどのようにしてできたのか、見ていきたいと思います。

子爵の家に生まれた武者小路実篤は、母方も勘解由小路家なので根っからのエリートです。ただ、父が2歳の時に亡くなっているので、子爵家のなかではそこまで裕福ではありませんでした。

学習院初等科に入学後、中等部高等部に進学していき東京帝国大学に入学します。自分の生存や生活・学びを、悩む必要がありませんでした。この環境から、理想や自由を考えられるようになります。

学習院初等科に入学後、順調に中等部まで進学します。その中等部時代に、志賀直哉と出会い親しくなります。この親友関係は、志賀直哉が亡くなるまで続きます。

高等学科時代に、ロシアの小説家トルストイの影響をうけます。「トルストイの「ト」を見ただけで、顔が赤くなった」エピソードがあるくらいです。東京帝国大学時代に、仲間と本格的に創作活動をし、大学を中退しています。

作家活動とともに、階級のない世界・理想郷を目指して、新しき村の設立実現を目指していきます。自分たちが、恵まれたエリートな点に後ろめたさのようなものがあったからです。

新しき村を宮崎県と埼玉県に建設し、数年ほど自給自足の生活を送ります。この時期に代表作『友情』は執筆されました。しかし新しき村には当時、理想主義・空想主義すぎると批判がありました。

武者小路実篤と志賀直哉は学習院中等科時代に出会い、お互いを刺激しながら、『白樺』を創刊します。性格も作風も違う二人が、高齢になるまで友情をはぐくみお互いを大切にしていく点に注目していきましょう

二人は、学習院中等科時代に出会います。読んだ本の感想を、手紙でやり取りしているうちに仲良くなります。また、お互いエリートの境遇に違和感を持っていたところも、意気投合した理由のひとつです。

お互いの作品にもストレートに意見をぶつけ合い、ケンカしたりや落ち込んだりします。しかし、気をつかわずに言い合える関係が心を許せる友情になり、亡くなるまで続いていきました。

1910年に文学雑誌『白樺』は創刊されます。人道主義や理想・自己実現の考えが、白樺派の作品全体に感じられます。

1923年に関東大震災が起き、その影響で『白樺』は終刊を迎えます。全160号創刊されました。小説や評論以外にも、ヨーロッパの芸術も紹介し美術界にも大きな影響を与えた雑誌になりました。

志賀直哉は80歳を目前に、自作の杖を送っています。庭木を削って、先端には滑り止めの革も巻いています。2本作って1本は自分・もう1本は武者小路実篤にプレゼントしたのです。十代で出会った二人が杖を使うまでの、長い友情を感じます。

感謝の気持ちを込めて『友情の杖』と呼び、大変喜びました。現在も武者小路実篤記念館に保管されています。

小説や詩では、白樺派らしい前向きなメッセージを感じられます。また、絵も素朴であたたかさがあり、野菜や草木など自然の美しさが魅力的です。武者小路実篤の代表作と、前向きになれる名言をご紹介していきます。

『友情』は、初期の代表作です。恋愛や片思い、友情をテーマに描かれています。書かれた当時は、もちろん恋愛や結婚は自由にできない時代です。その中でも白樺派らしく、恋愛をとるか友情をとるかを題材にしていきます。

主人公が落ち込んだりいじけたり、また一人で浮かれたりと片思いらしい心の動きが楽しめます。近代文学ではありますが、比較的読みやすい表現になっています。

『真理先生』は戦後に書かれた長編小説です。個性的なキャラクターたちが、真理先生と呼ばれる人物に会いに行き話を聞いてもらったり、助言をもらったりするお話です。

ドラマティックな出来事はありませんが、現代人でも共感できる部分が多い内容になっています。理想を持って生きようと表現した、武者小路実篤らしい作品といえます。

おすすめ名言をご紹介します。

• 君は君　我は我　されどな仲良よき　
• すぐれた人間は、いざという時が来ないでも、いつも全力を出して仕事をしている。
• 他人がどうであろうと自分さえ、ちゃんとしていればいい。するだけのことをすればいい。
• 他人に要求することを先ず自分に要求せよ。
• 幸福は与えられるより、努力で獲得するほうが多い。

晩年、色紙に野菜や草木の絵を描き、毛筆で文を添えていました。まだまだ、名言がありますのでぜひ自分のお気に入りを見つけてください。

武者小路実篤の作品では、ポジティブな気持ちにさせてくれるものが多いです。周囲から理解されなくても、自分を信じて貫く大切さを感じます。普段、近代文学を読まない方は、まずは短編小説や詩から作品に触れてみましょう。以下の記事もあわせてご覧ください。