太宰治作品のおすすめ人気10選｜本名は？有名作品や代表作・最高傑作も！

太宰治は昭和初期の文豪です。繊細な心理描写と巧みな構成、読む者の想像をかき立てる文章は没後70年以上経った今もなお色褪せず、人々の心を掴んで離しません。

太宰治は自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながら数多くの作品を発表しました。既存の価値観や階級社会に疑問を投げかけた太宰はその作風から、無頼派と呼ばれました。

この記事では、そんな太宰治をこれから読む方のために、作品の選び方と代表作などの有名作品を含めたおすすめ作品をご紹介します。さらに、電子書籍「青空文庫」についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。太宰治の本名・最高傑作などの情報も必見です。

太宰治は「人間失格」・「走れメロス」など後世に残る作品を数多く書いた、昭和を代表する文豪です。お笑い芸人の又吉直樹さんが愛読している作家として知っている方もいますよね。そんな太宰治について、まずは生い立ち・性格・作品の魅力を解説します。

太宰治の本名は津島修治で、青森県津軽の大地主の家に生まれました。芥川龍之介などに傾倒し、中学・高校の頃から数多くの作品を書いています。さらに東大仏文科に入学するなど、一見若い頃から才能を発揮して順風満帆な人生を送っているように見えますが、20代から自殺未遂を繰り返し、38歳で入水自殺で生涯の幕を閉じました。

その背景には14歳で父と死別、中学生からの下宿生活などにより両親からの愛情を一身に受けられず、さらに感受性豊かで不安定な性格などが影響されているといわれています。しかし、多くの人が感じ取れない繊細な感性が培われていたのも事実であり、暗いながらも人を惹きつけてやまない魅力が太宰治の作品にはあります。

太宰治の作風は、作家として活動していた時期によって大きく変化するのが特徴です。それだけ作家、太宰治の生涯が波瀾万丈であり、反映するように作品が書き上げられているといえます。

太宰治の魅力は、作品ごとに楽しめるさまざまな描写にあります。軽快な表現による心が晴れる作品から真に迫る重厚な文体まで幅広い作品があるため、思わず共感する一節や作品に読者が出会えるのです。また、太宰治作品が人気を集める理由として、自我と向き合う「人間らしさ」が強く感じられる作品が多いからだと考えられます。

若者らしい挫折・死への興味と恐怖・社会的立場が確立した後の人生への絶望と、太宰治の作品には多くの人間らしい「私」のあり方が詰まっています。自我と向き合う姿勢は、現代の私たちにも通じるところがあるため、何年たっても心を揺さぶられる名作として愛読されているのです。

太宰治が書き上げた作品は多岐にわたり、作品の長さもさまざまです。そのため、自分の読書時間やスタイルに合わせて作品の長さを選ぶのもおすすめです。

「走れメロス」や「富嶽百景」といった短編は、文庫本で20～30ページ程度で読めます。初めて太宰治を読む方は、まず短編から太宰治の作品を知っていくのがおすすめです。読書の時間をあまりとれないけれど、太宰治の世界を味わいたい方にも適しています。

一方で長編は「太宰治の世界にじっくりと浸れる」のが大きなポイントです。「人間失格」や「斜陽」といった有名な長編は、読み進めるごとに作品の魅力を味わえます。太宰治の短編を何作か読んだ方や、ゆっくり読書の時間がとれる方は、長編に手を伸ばしてください。

大学除籍・就職失敗・借金生活・繰り返す自殺未遂・薬物中毒・精神病院への入院・警察沙汰を起こし家族からの勘当など、このころの太宰はまさに挫折と波乱の繰り返しで荒んだ生活を送っていました。そんな中で執筆されたのが前期の作品です。

この時期に書かれた作品は生活が乱れているのと同様、作風が安定していません。しかし、さまざまな小説技術の試みが随所に見られ、他者を圧倒する才能の片鱗を覗かせます。

前期の作品は自身をモデルにしたとみられる「道化の華」、精神病院へ入院中に執筆した「人間失格」の土台となったと言われる「HUMAN LOST」、前期太宰のモチーフが凝縮された「猿面冠者」などがあります。

周囲の支えや結婚を機に、太宰は荒れた生活をあらため市井の作家となると決意します。公私共に安定した生活を送り、作風も大きく変わりました。破滅型作家とまで言われた太宰ですが、この時期には明るく美しい作品を数多く残しています。

太宰治は暗いから苦手と感じている方にこそおすすめしたいのが、中期の作品です。暗い描写が少なく太宰の芸術的な感性を素直に感じ取れます。読みやすい作品が多いため初めて太宰を読む方に適しており、中でも中期の代表作「走れメロス」は、友情を描き教科書にも掲載されているため、中学生にもおすすめです。

さらに、女学生の視点から一日を描いた「女生徒」、誰もが知る昔話を太宰の世界観で描いた「お伽草紙」、太宰の実体験を基にした「東京八景」・「富嶽百景」などがあります。

終戦後の社会に絶望した太宰はふたたび酒と薬物に手を出し、生活が荒んでいきます。それに伴い作風にも変化が表れました。この時期の太宰作品は生への絶望があふれ、遺言的な内容の作品が増えていきます。

戦後日本で上流階級が没落していく作品「斜陽」がベストセラーとなり、太宰は一躍有名作家となりました。流行語「斜陽族」が太宰作品から生まれ、当時社会現象となった人気のほどがうかがえます。

後期の代表作は「斜陽」、自ら死を選ぶ前に書き綴った「人間失格」、故郷を舞台にした自叙伝「津軽」、新たな可能性を感じさせるも未完に終わり太宰の遺作となった「グッド・バイ」などがあります。

太宰治といえば「人間失格」が最も有名ですが、初めて太宰を読む方には手放しでおすすめできません。その理由は作風があまりにも暗いためです。

作風が暗い小説は太宰治に限らず多々ありますが、多くの作品が最後は前向きな気持ちで終わります。不運や不幸の中にも救いがあるのです。しかし、「人間失格」は最初から最後まで一人の男が破滅へと向かっていく物語で、救いがありません。

最初の一冊としてはあまりにも内容が暗く重いため、読み進めるのも辛くなってきます。太宰治は多種多様な作風が魅力の1つですから、初めの一冊に「人間失格」を選ばずとも他に読みやすい作品はたくさんあります。「人間失格」はある程度太宰作品に慣れてから腰を据えて読むのをおすすめします。

「走れメロス」は国語の教科書にも採用されているため、読んだ経験がある方も多い作品です。太宰治のなかでも有名な1作で、読みやすいので初心者にもおすすめです。主人公メロスが親友を助けるために奔走するストーリーは多くの人に感動を与えています。

当時芥川賞の選考委員を川端康成が担っていました。芥川賞を渇望していた太宰は川端康成に対して激昂し、文芸誌の紙面で川端康成を批難する文章(作品)「川端康成へ」を掲載するなど、2人には芥川賞以降確執がありました。

そんな2人ですが、1939年に発表した太宰の「女生徒」を川端康成が褒め称え、「女生徒」はたちまち太宰の代表作となります。一方的に批難されていた川端康成が太宰の作品を認めるところが懐の広さを感じますし、確執のある川端康成も認めざるを得ない太宰の文章も素晴らしいものです。

「女生徒」は中期の作品の中でも傑作で、のびのびとした作風と透明感まで感じるような美しく小気味いい文章が特徴です。これから太宰を読む方には、ぜひ手にとってもらいたい一冊です。太宰が川端康成に宛てた抗議文「川端康成へ」は、作品の1つとして青空文庫などで読めます。

「斜陽」は、1947年に発表された太宰治後期の中編小説です。発表するやいなや話題となり、戦後日本のベストセラーとなりました。没落していく人々を指す「斜陽族」といった言葉が流行になるほどで、国語辞典の斜陽の欄には没落の意味が加筆されるほどの影響がありました。

新潮文庫での累計発行部数は360万部以上です。最初の発行元である筑摩書房は数えられていないため、総発行部数はさらに増えます。

破滅へと向かっていく弱いものの美しさを描いた作品で、太宰文学の最高峰です。ただし、後期の作品らしく全体的に暗い雰囲気が漂う作品です。明るく読みやすい作品を探している場合は他の作品を選びましょう。

太宰治最大の話題作にして問題作と言えば、代表作でもある「人間失格」です。「恥の多い人生を送ってきました」の導入文はあまりにも有名です。太宰治の自叙伝のような内容ですが、書き上げた後に玉川上水で自ら死を選んだため遺書ではないかともいわれています。

新潮文庫の累計発行部数だけでも600万部を超えており、夏目漱石の「こころ」と並ぶ日本文学史の傑作です。

妻である津島美知子さんの話では、太宰は「人間失格」の題で話を書くのが物心ついた頃からの願いであったといわれています。願いが叶ったから死を選んだのか、死を意識したからこそ人間失格の題を付けたのか、真相は70年以上も謎のままです。

太宰作品に関心はあっても、小説が苦手な方もいますよね。そんな方におすすめなのが、漫画・映画化された太宰治の作品です。漫画は人間失格はもちろん、斜陽・グッドバイなど太宰治の代表作品が数多く販売されています。絵があると物語の情景がわかりやすく読みやすいためおすすめです。

また、映画も「人間失格」・「ヴィヨンの妻 ～桜桃とタンポポ～」・「斜陽」・「パンドラの匣」などが公開されており、最近でも活躍している俳優が出演している作品もあります。まずは好きな俳優が出演している映画から太宰作品に触れるのもおすすめです。

太宰作品に関心があってもまだ読んだ経験がない方の中には「無料で試し読みしたい」、そんな方もいますよね。また、太宰作品が好きでも作品数が多くて出費が気になる方もいるものです。そんな方におすすめなのが、電子書籍「青空文庫」です。

「青空文庫」とは、著作権の消滅した作品などを揃えた電子図書館で、公開されている作品はすべて無料で読めるのが特徴です。太宰作品も代表作を含め数多く公開されています。青空文庫の公式サイト、もしくはkindleストア(青空文庫)でダウンロードすると読めますので、ぜひこちらも活用してください。

文豪ストレイドッグスは、ヤングエースで連載されている人気漫画です。現代の横浜を舞台に、現代風にキャラクター化された太宰治・芥川龍之介・中島敦などの文豪がアクションバトルを繰り広げるといった、一風変わった設定が魅力です。

キャラクターの人物設定も実際の文豪を元にしており、戦う際の能力名が文豪ごとの代表作になっています。たとえば、太宰治の能力名は「人間失格」です。太宰治をはじめ文豪作品が好きな方はもちろん、この漫画からさまざまな文豪の魅力を知って実際の作品を読むのもおすすめです。

太宰治の選び方とおすすめ作品の人気ランキングをご紹介しました。陰鬱としたイメージを持たれがちな太宰ですが、読みやすい作品もたくさんあります。これからを読もうと思っている方はぜひ今回の記事を参考にして、太宰作品の魅力に触れてみてください。