井上靖のおすすめ作品20選｜代表作や映画化された作品まで徹底解説！

「井上靖」は学生の頃、国語の授業で一度は聞いたことのある名前ではないでしょうか。井上靖さんの小説は簡潔明瞭な文体と、普遍なテーマがあり、今も多くの読者を魅了しています。

彼の小説のジャンルは幅広く、自伝的小説・現代小説・歴史小説・シルクロードを舞台にした小説・中国を舞台にした小説があります。現代小説はドラマ化・映画化されたものもあり、1900年代には一世を風靡しました。歴史小説では大河ドラマになったものもあり、今でも多くのメディアで取り上げられています。

ここでは代表作をはじめ、一度は読んでもらいたい井上靖の小説を20冊ご紹介します。好きなジャンルから選ぶもよし、ドラマ化映画化されたものを選ぶのもおすすめです。井上靖がどんな人なのかも必見です。

1907年（明治40年）5月6日 に、北海道上川郡旭川町（現：旭川市）に軍医・井上隼雄と八重の長男として生まれます。軍医の父は、転勤が多く韓国へ従軍した際、靖は母方の郷里・静岡県伊豆湯ヶ島（現在の伊豆市湯ケ島）へ身を寄せました。

九州帝大へ入学するも中退し、京都帝国大学文学部哲学科へ入学しなおします。その後、懸賞入賞した縁があり、毎日新聞大阪本社へ入社し学芸部を担当します。一時期、日中戦争のため召集を受け出征するが、翌年には病気のため学芸部へ復帰しました。

戦後は、学芸部副部長となり1951年（昭和26年）毎日新聞社を退社します。その後は、執筆や講演会などで日本中を旅をし多くの小説を発表してきました。1991年（平成3年）1月29日 に急性肺炎のため東京都中央区の国立がんセンターで亡くなりました。享年83です。

井上靖さんの小説の魅力は何といっても「万人受けする読みやすさ」です。難しい言葉を使っていますが、読めばなんとなくの意味が分かる文章になっています。感情の表現や場面説明などの文章はその情景が思い浮かべることができます。

これらの表現力は、どれも新聞社に勤めていたことで身についたものであり、幼少期から読書に親しんでいたためです。彼の人生が、小説を書き上げたといっても過言ではありません。

生涯で多くの文学賞を受賞してきました。その中でも一部を抜粋してご紹介します。

『風林火山』は、井上靖さんが1953年（昭和28年）10月から翌年12月にかけて『小説新潮』に15回にわたって連載した長編小説になります。2007年には井上靖さんの生誕100年を記念してNHK大河ドラマ『風林火山』の原作になりました。

『風林火山』は武田信玄の軍師として知られる山本勘助の生涯を描いた物語です。山本勘助が浪人から軍師へとのし上がっていく様を描いた出世物語です。

『サンデー毎日』に1968年1月7日号から1969年3月9日号まで連載された、井上靖さんの長編小説です。時代は中大兄皇子と中臣鎌足が活躍した大化の改新後の激動する時代を題材にされています。内容は、歴史小説でありながら恋愛小説になっています。

万葉随一の美女と言われた額田女王をめぐる物語と古代国家形成で暗躍する男たちとの恋愛ドラマを描いています。来いと動乱の中に生きた劇的で華やかな生涯に心躍ること間違いなしです。

1957年12月に刊行した壮大な長編歴史小説です。1980年にはドラマ化もされ、話題となった作品です。時代は奈良時代、遣唐使として留学する僧たちに焦点を当てた物語になります。この時代の移動手段は船のみで命がけの旅になります。留学僧の運命を描いた壮大な物語です。

1956年2月24日から1957年8月22日まで「朝日新聞」に連載された長編小説です。『氷壁』の素材となったのは、1955年に起こった「ナイロンザイル事件」です。登山でナイロン製ロープを使用したことにより、墜落事後が起こり、社会問題に発展ました。この初期段階を描いた物語になります。

『氷壁』の主人公・新鋭登山家の魚津恭太は、昭和30年の年末から翌年正月にかけて、親友の小坂乙彦と共に前穂高東壁の冬季初登頂の計画を立てます。登山直前に思いがけない秘密を知り、落ち着かぬ気持ちを抑え、仲間とともに登山を開始します。友情と恋愛の確執を、「山」という自然と都会とを照らし合わせて描いている物語です。

第22回芥川賞受賞作になった短編小説です。『猟銃』『闘牛』『通夜の客』の3本が収録されています。元々、短編小説が得意であった井上靖さんの素晴らしさが伝わる単行本です。繊細な言葉選びと場面展開が魅力の一冊です。

『闘牛』では戦後を代表するイベントプロモーター・小谷正一が西宮球場で仕掛けた闘牛大会をモデルにされています。社運を賭けた新聞社主催の闘牛大会の実現に奔走する新聞編集局長の情熱と戦後の日本に漂っている悲哀を混乱した世相を描いた作品になります。

『あすなろ物語』は、1953年1月号から6月号まで連載された自伝的小説です。本格的に文芸活動を開始した初期の頃の作品になります。新潮文庫版で発行部数ベスト20に入り、井上の作品では最も多い発行部数になりました。

物語は主人公・梶鮎太の幼少期から青年壮年期までの青春を巡る小説です。成長の中で、さまざまな出来事を経験し、やがては新聞記者として活躍する姿を描いた連作小説です。6つの短編に別れているのは、違った時期を描いた物語です。しかし、成長の流れは繋がっているので、長編として読むこともできます。

1966年から1968年にかけ『文藝春秋』に掲載された長編歴史小説です。1969年に日本文学大賞受賞をしました。後にロシアの大規模な協力のもと映画化もされ、日本とロシアで放映されました。映画のロシア語題名は『Сны о России』（ロシアの夢）。

物語の舞台は江戸時代になります。伊勢を出発し、光太夫ら17人を乗せた船は、江戸に向かう途中で荒らしに遭い、ロシア帝国のアムチトカ島に漂着しました。何とかして帰国を模索する日露の漂流史を背景に描き出した歴史小説です。

歴史小説で、『群像』1959年1月号から5月号まで5回にわたって連載されました。「西域小説」の代表作とされ、1960年に、本作と『楼蘭』によって毎日芸術賞を受賞した作品です。莫高窟から発見された敦煌文献の由来を主題にしており、20世紀になって評価され始めました。

時代は北宋の時代になります。主人公趙行徳は、科挙の最終試験殿試を受けるため、首都開封にやってきました。開封の街で、売られていた一人の女性を助けたところ、女性から一枚の布切れを渡されます。布切れ一枚から始まる歴史小説です。

井上靖さんが80歳から2年かけた最後の長編になります。聖人・孔子の人物像を描く歴史小説です。孔子の『論語」に収められた詞がどのような背景から生まれたのかを紐解き、架空の弟子・蔫薑が独自の解釈を与えていきます。

中国に井上さん自身が数度訪れ、20年来の祈願の作品になっています。現代社会にも通ずる「乱世を生きる知恵」を提示した野間文芸賞受賞作品です。

1975年に短編小説として出版されました。井上靖さんの母親である「八重」が80歳のときから、亡くなった89歳までの晩年の人生を描いた小説です。1964年の「花の下」・1969年の「月の光」・1974年の「雪の面」の三部作が収録されています。

2012年には映画化され、「八重」を樹木希林さんが演じたことでも有名になりました。認知症が進んでいく母と支える家族の母への思い・「愛」や「生」について描いた物語です。

通勤・通学の電車内で小説を読みたいと考えている方は、電子書籍もおすすめです。井上靖の作品もたくさん電子書籍化されているので、気になる方は検討してみてください。

荷物の負担が減るので、カフェでの読書や旅行のお供にも便利です。おすすめの電子書籍アプリを紹介した記事がありますので、ぜひリンク先ページをご確認ください。

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読む順番や初心者にも読みやすい人気作品など、役立つ情報がたくさん掲載されています。ぜひ記事の下のリンク先ページをチェックしてください。

井上靖さんの作品はどれも素晴らしく、温かみのある文が特徴的です。それゆえ、上質な大衆文学として世代を超えて多くの方に読まれます。近代文学は言葉が難しいと敬遠されがちですが、井上靖さんの小説は読みやすく、近代文学の入り口として最適です。ぜひ、井上靖さんの小説を手に取ってみましょう。以下の記事もあわせてご覧ください。