【代表作は？】田辺聖子の小説おすすめ11選｜エッセイや恋愛省御説・芥川賞作品も

田辺聖子は91歳の生涯を終えるまで、とてもたくさんの本・作品を残しました。愛嬌のある可愛らしい見た目に反して、意外にも恋愛小説が多く女性たちの心を鷲掴みにしてきた作家です。大阪弁をこよなく愛し、方言文学の制作に取り組んだ経歴もあります。

芥川賞作家として知られている田辺聖子は、手がけたジャンルも幅広く、歴史小説や映画化・ドラマ化された小説もあります。それだけに、いざ田辺聖子の作品を選ぼうと思っても、どれから読めばいいのか迷いませんか？

この記事では、田辺聖子の小説の魅力はもちろん、田辺聖子自身の魅力についてもご紹介します。また、おすすめの田辺聖子の作品8選や作品の選び方もご覧いただけます。ぜひ、最後までお読みだくさい。

田辺聖子の作品にはさまざまな女性の生きざまが描かれています。読者はその一人ひとりに自分自身を重ね合わせ、共感したり励まされたりするのです。そんな小説が書けるのも、田辺聖子自身が経験豊富な女性だからこそです。

作品を読みながら大いに涙し、大いに笑えるのは田辺聖子の小説の大きな魅力です。50年以上前に書かれた作品にも決して古さを感じさせず、新鮮さを保っているのも田辺聖子ならではと言えます。

『ジョゼと虎と魚たち』は、平凡な大学生と足の不自由な女の子の心と心がぶつかり合うような感情を描いたラブストーリーです。2003年に映画化され、話題になりました。1985年の作品ですが、古さを感じさせないストーリー展開は、時代が変わっても共感を呼びました。

この作品は2021年に韓国映画でもリメイク版が制作されています。世代や国籍を超えて、たくさんの人に支持されている作品だと言えます。

NHKの朝の連続テレビ小説『おはようさん』は田辺聖子の『甘い関係』が原作です。大阪のOLの日常を描いた作品で、平均視聴率は39.6%、最高視聴率は44.0%の大ヒット作です。舞台はやはり大阪でルームシェアする3人のヒロインが登場し、好評を博しました。

3人がそれぞれの結末を迎えるストーリーは、ぜひ原作でお読みください。

『隼別王子の反乱』『新源氏物語』『舞え舞え蝸牛・新荻窪物語』は宝塚歌劇団で舞台化されています。田辺聖子自身、宝塚大劇場へは5歳から通っていたとの話もあるくらいですから、作家になった瞬間、自身の小説の舞台化は約束されていたのかもしれません。

中でも『隼別王子の反乱』は小説化するのに10年かかった大作。それが大好きな宝塚で舞台化されるのはこの上ない喜びだったはずです。

『新源氏物語』は『田辺源氏』とも呼ばれ、たくさんの読者に愛されてきました。田辺聖子が源氏物語を現代訳したのは、ご自身が30代の頃と言われています。注釈を見ずに楽しめる訳を心がけ、より現代人の感覚に近づけたのが人気の秘密です。

『新源氏物語』は文章から敬語を取り除き、説明不足な点を補い、冗漫な部分は削除されています。さらに、光源氏をより魅力的な人物に描きなおしているところも多くの読者に愛されている点です。

数ある田辺聖子の恋愛小説の中でも『風をください』はファンから一番好きな小説と評される作品です。仕事と恋愛に生きる主人公と、周りを取り囲む個性豊かな登場人物たちの生き様にはきっと共感できます。恋の切なさや迷う気持ちなど古さを感じさせない描写に魅了されたら、田辺聖子の恋愛小説をもっと読みたくなるはずです。

田辺聖子の代表作は数々ありますが、『九時まで待って』も間違いなく田辺聖子の代表作です。徐々にすれ違っていく男女の生活が手に取るように読み取れ、同世代の女性にとっては刺さる内容です。

生き生きとした関西弁が生々しくもあり、切なくもあり、まさに大人の恋愛小説です。心がギューッとするような小説に出会いたい人におすすめです。

『言いよる』『私的生活』『苺をつぶしながら』の3作にわたり主人公・乃里子の31歳から35歳までを描いた小説です。乃里子3部作と呼ばれ、著名な作家も愛読書に挙げている恋愛小説です。この3部作をきっかけに田辺聖子にハマるファンも多く、いかに魅力的な小説かが分かります。

一度は絶版になりましたが、初刊行から30年経ってから復刊されています。田辺聖子にとっても思い入れの強いこの作品を、あなたも読んでみませんか？

『感傷旅行』は、旅にまつわる表題作の他に『恋の棺』『いま何時？』『田舎の薔薇』の3作が収録された短編集です。旅の終わりに感じるセンチメンタリズムが描かれており、誰もが経験したであろう感情で共感する人が多い作品です。

旅の思い出は忘れたくないものですが、それを日常に持ち越さないところに潔さが感じられる作品です。旅行好きな人に読んでいただきたい作品です。

田辺聖子は、1964年に『感傷旅行』で芥川賞に輝いています。純文学に授与される芥川賞に枷を感じて「直木賞の方が欲しかった」と冗談混じりで受賞のコメントを残しています。しかし、この受賞作品をきっかけに一気に人気作家へと上り詰めます。

以後は1984年から2004年まで直木賞の選考委員を務める一方で、ご自身の作品も菊池賞・泉鏡花賞など数々の受賞歴を持っています。さらに、2008年には文化勲章も受賞し、名実ともに日本の文学会に名を残す作家と言えます。

女流作家の寵児・文豪の名前とは裏腹に、とても愛くるしいキャラクターだった田辺聖子は、たくさんのエッセイも残しています。愛してやまなかった関西弁にまつわる作品が多く、これほどまでに的確に関西弁を論じられる人は他にいないと思わせるほどです。

その他にも、大人気の『カモカシリーズ』もおすすめです。夫・川野純夫との出来事が綴られているエッセイは爆笑必至・抱腹絶倒なエッセイです。二人の軽快な関西弁とおもしろエピソードはきっと心を温かくしてくれるはずです。

温かみのある関西弁と愛くるしいキャラクターでたくさんの人から慕われていた田辺聖子。そのお人柄が伺えるような作品の数々は、笑いと涙と感動がいっぱい詰まっています。あなたも田辺聖子の世界観に触れて、ほっこりしませんか？