加納朋子の小説おすすめ10選｜代表作『ガラスの麒麟』や『駒子シリーズ』などを紹介

身近な日常の謎を独自の世界観で解き明かすストーリーが秀逸な加納朋子の小説。ミステリーというには、あまりにも身近すぎる謎を巧みな描写テクニックで表現する作風が特徴的です。

加納朋子のミステリージャンルの小説では、めでたくおさまるラストの局面が多く血生臭い殺人事件などはあまり起こりません。また、物語のひとつひとつのエピソードがとても温かく、そっと心に残る文体や表現が男女問わず人気です。

この記事では、加納朋子の小説の魅力やおすすめの作品をご紹介します。映画やテレビドラマにもなった人気作品ついても解説しますので、ぜひ記事や口コミを参考に自分に合った加納朋子の小説選びにお役立てください。

加納朋子は福岡県北九州市生まれの小説家です。文教大学女子短期大学部文芸科を卒業後、化学メーカーに勤務する傍ら、執筆活動に力を入れます。1992年に『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞し、小説家デビューとなりました。

実は加納朋子は、急性白血病による、抗がん剤治療や骨髄移植を経て寛解した経験をもちます。入院生活をもとに自らの闘病の様子を描いたノンフィクション闘病記『無菌病棟より愛をこめて』を刊行。退院後は、執筆活動に専念する生活を送っています。

日常の謎が中心に据わっていてる加納朋子の小説。長編ミステリー以外にも連作短編集が多く、ひとつひとつのエピソードがとても温かくそっと心に残ります。人物像は軽やかなタッチで主人公も愛らしい女性が多く、どの話も相互に緩い結合を持ち合わせているのが魅力です。

基本は推理小説ですが、各短編での伏線が重なり短編集全体の謎につながる仕掛けは、本格ミステリ的で読み応えがあります。一方でやわらかい読後感を残す加納ワールドは、足を踏み入れると、時間を忘れるくらいはまり込むこと間違いありません。

駒子シリーズは、入江駒子を主人公とした3作品の短編連作集で創元推理文庫から刊行されています。加納朋子の世界観、空気感がすでにうかがえるデビュー作『ななつのこ』は、ひとつひとつの話が着々と終結しており優しい世界観が構築されています。

『ななつのこ』に続く『魔法飛行』は、謎めいた雰囲気に満ちたストーリーに。文章修業を始めた駒子が近況報告のように綴られ、さらなる仕掛けが施されています。前2作はミステリー色の濃い作品ですが、3作目の『スペース』は恋愛小説要素が多く詰め込まれています。『ななつのこ』『魔法飛行』『スペース』の順番で読んでください。

主人公のＯＬ片桐陶子のキャラが魅力の「陶子シリーズ」では、2作品が集英社文庫より刊行されています。1作目の月曜日の水玉模様』は、一般職OL兼名探偵である陶子とリサーチ会社調査員の萩が不思議な事件を解明していくストーリーで、7つの連絡短編として収められています。

『月曜日の水玉模様』の伏線としてつながる2作目の小説が、京都水無月大賞受賞作品の『レインレイン・ボウ』です。高校ソフトボール部仲間の通夜で再会した、七人の女性たちを描く青春群像劇は、ミステリーのエッセンスを加えながら前向きに生きようとする彼女たちの姿が描かれています。

作者の日常から少し離れたミステリーを書きたいという思いから描かれた「ささらシリーズ」は、幻冬舎文庫より刊行されています。『ささら さや』『てるてるあした』『はるひのの、はる』の3作品が刊行されており、どの順番で読んでも伏線としてつながる小説です。

『ささら さや』は、突然、自分の大好きな夫を失うも、その夫が幽霊になり残された妻との切なく愛しい日々を描く連作ミステリー小説です。ほか2作も、途中で切り上げるのが惜しいくらいテンポのいい読み味で、ミステリーとファンタジーが同時に楽しめるシリーズとなっています。

アリスシリーズは、『螺旋階段のアリス』『虹の家のアリス』の2作品が文春文庫より刊行されています。1作目の『螺旋階段のアリス』は、探偵事務所を開業した仁木と押しかけ助手の美少女、安梨沙のコンビが珍事件を解き明かしていく7つの物語の連作短編集です。

2作目の『虹の家のアリス』では、「不思議の国のアリス」をこよなく愛する二人が営む小さな探偵事務所に持ち込まれる六つの事件を解決していきます。全編を通して家族をテーマにしたストーリーで、ミステリーなのに和める温かいタッチで描かれている小説です。『螺旋階段のアリス』『虹の家のアリス』の順番で読んでください。

陶子シリーズのスピンオフにあたる「七人の敵がいるシリーズ」は2作品で、集英社新書より刊行されています。1作目の『七人の敵がいる』は、編集者として仕事をこなすワーキングマザー山田陽子が、息子、陽介の小学校入学を機に、ＰＴＡや学童保育所父母会など、つぎつぎと振り回される母親を描いた痛快子育てストーリーです。

また、2作目の『我ら荒野の七重奏』では、中学校に入った陽介が吹奏楽部に入部しますが、またしても「吹奏楽部親の会」での戦いの日々を送ることになります。青春の舞台裏を支えるユーモラスに描かれた親たちの奮闘記を楽しんでみてください。

『ななつのこ』は、謎解きミステリー七編の短編連作です。短大生の入江駒子は『ななつのこ』という本に出逢い、すっかり惚れこみます。さらに駒子はファンレターを書こうと思い立ち、身辺を騒がせた事件を交えて長い手紙をたと綴ったところ、なんと事件の解決編ともいうべき返事が舞い込んできます。

この『ななつのこ』は、ファンレターをきっかけに駒子と作家のやりとりが鮮やかにミステリーを描き出す、加納朋子の秀作シリーズです。物騒な殺人や事件ではなく読後はやさしい気持ちになれる物語に、ページをめくる手が止まらなくなるに違いありません。

『コッペリア』は、人形に憑かれた人々が織りなす情念を描く長編ミステリー小説です。天才的な人形作家と人形を溺愛する青年、人形になりきろうとする女優、そしてパトロンと、人形に憑かれた人々が織りなす人間模様が描かれています。

人形に魅せられた人々の心情はあえて感情移入しにくいような作風となっていますが、作者が初めて描くこの長編ミステリーは異色のミステリアスな小説となっています。人形に魅せられた人間たちの物語をじっくり味わいながら読んでみてはいかがでしょうか。

『無菌病棟より愛をこめて』は、作者自身が辛い闘病生活に奮闘する日々を綴ったノンフィクション作品です。急性骨髄性白血病で急遽入院となり抗癌剤治療が始まったことで、仕事も妻、母、主婦としての役割もすべて放り出さなければならない状況になってしまいます。

しかし、そんな作者を支えたのは家族と友人たちとの絆でした。周囲から見守る人たちのやさしさや、作者の素直な気持ちの表現を辛くともユーモアを忘れずに綴られています。経験者でないと書けないリアルな内容も読みやすく、温かさと涙と笑いに満ちた闘病記です。

『ガラスの麒麟』は、日本推理作家協会賞受賞作品です。「美しく聡明な」女子高生の安藤麻衣子が通り魔に刺殺されたことから始まる連作ミステリー小説です。

安藤麻衣子の同級生やその父親、学校の養護教諭や担任など、麻衣子の周囲の人々の視点で事件に関連することや、それぞれの心情が語られるストーリーです。少女たちの心の震えが聞えてくるような、それでいて温かくて優しくもあり、そして切ない名作です。

『空をこえて七星のかなた』は、七篇からなる新刊の連作小説です。「小説すばる」に掲載されていた、この7つの作品は、加筆修正がおこなわれ一冊の本として刊行されました。

星が小説の全体を貫くモチーフとして用いられており、等身大の人間が直面する数々の問題が意外な形で解決していくストーリーです。各話が北斗七星のように揃ったその時、驚きと爽快な余韻が楽しめ、そして読者の心に清々しさを残すおすすめの作品です。

『ささら さや』は、新垣結衣が初めて母親役を演じた『トワイライト ささらさや』として映画化されています。原作の世界との違いがありますが、その違いと比べて見るという楽しみ方もおすすめです。

また、ささらシリーズの『てるてる、あした』は2006年にテレビドラマ化されています。2012年には、七人の敵がいるリーズの『七人の敵がいる』が「七人の敵がいる!〜ママたちのPTA奮闘記〜」のタイトルでテレビドラマ化されています。PTA活動の中で獅子奮迅するママたちの奮闘記を、映像でも楽しんでみてください。

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本をまたいで緊密につながる、ミステリーの仕掛けが秀逸な加納朋子の小説。繊細な文章で綴られるストーリーは、ミステリーなのに優しい世界観を持つ作者ならではの魅力を存分に感じられます。ぜひ記事を参考に加納朋子の小説を楽しんでみてください。

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