山本有三の小説おすすめ5選｜『生きとし生けるもの』『真実一路』など代表作を紹介

小説家として有名な山本有三は、政治家で活躍していた時期があります。第二次世界大戦後は、貴族院勅撰議員（のちの参議院）において1946年5月、続いて参議院議員として1947年5月3日～1953年5月2日まで在任期間を全うしました。所属政党は「緑風会」及び「無所属倶楽部」でした。

1947年から参議院議員を務め文化委員長や文部委員長を歴任し「教育公務員特例法」の一部改正に関わるなど政治の仕事でも活躍していたのです。

政治家として活躍する前から、数々の小説を執筆していた山本有三は、自身の経験を活かし「新仮名遣い制定」や国語漢字問題に取り組み「ふりがな廃止論」「憲法の口語化運動」にも積極的にかかわり尽力しました。

山本有三は、1887年7月27日栃木県に生まれました。呉服商の跡取り息子として裕福な暮らしをしていたようです。しかし、跡取りとして育てられたので、上級学校への進学が認めてもらえないなど、我慢をするしかなかったのでした。

仕方なく家業を継いだのですが、そのころから執筆活動は始めていて、出版業界に投稿し入選を果たしたり、母親からの力添えもあり上京できたのです。上京後に一浪の末、東京帝国大学（東大）独文学科に入学後、学業と執筆活動を両立しました。

山本有三の著書は大きく分けて小説・物語と、随筆・評論・戯曲などがあります。中でも小説は「大正」から「令和」へと現在でも読み継がれ、学びの多い作品が再編され、多くの人に読まれています。

山本有三の代表作と言われている『真実一路』や『路傍の石』はあまりにも有名ですが、読んだけれど、意外と覚えていない方も多いのではないかと思います。そこでもう一つの名作『生きとし生けるもの』を加えてご紹介します。

『生きとし生けるもの』は、大正末期に新聞に連載されていたのですが、著者である山本有三が風邪をこじらせ連載が終了となってしまいました。一説には風邪のせい、とされたのは言い訳ではないかともいわれています。

未完で終わってしまった感はありますが、小説でありながら戯曲のようなストーリー展開で、人間の強さと弱さや苦悩を描いている作品です。登場人物が生き生きと描かれていて、引き込まれ気づけば読み終わっていた、となるような作品と言えます。

貧しい家庭に生まれながらも、貧困にへこたれず自立した人間となるべく、努力をする少年の物語です。日本人の根底に流れている、実直で努力家の面を前面に押し出した作品と言えます。

『路傍の石』は「朝日新聞」で連載後、改稿したものが『主婦の友社」にて連載となったのですが、時代の影響を受け未完となっています。しかし、1955年・1964年と戦前戦後に、小説をもとに脚本家を変えながら、4回も繰り返し映画化されています。

こちらの山本有三の著書『真実一路』も映画化第二弾としてヒットした作品です。『真実一路』の言葉がすでに人生への教訓のように扱われ、色紙に納められるなどしていました。しかし小説の中での真実一路はいろいろなとらえ方があるようです。

登場人物それぞれの境遇がドラマティックな部分があり、繰り返し映画化されるのが納得と思える作品です。戯曲も得意とした山本有三らしい小説と言えます。

山本有三の作品の中でも『波』は、海外での評価が高い作品です。このように、山本有三ファンではない人たちにはあまり聞きなれない秀作も多くあります。

『花・死人に口なし』や『ウミヒコヤマヒコ』『汝』などは、数名の作家からなる短編集で、山本有三の作品も収録されています。中でも高評価を得ているのは『汝』に収められている『チョコレート』です。

『心に太陽を持て』は多くの偉人に関する短編集のような作品となっており、こちらもおすすめしたい作品と言えます。

山本有三著『米百俵』は、長岡藩（新潟県）の藩士「小林虎三郎」によって行われた教育にまつわる故事を、史実に基づいて戯曲化ししたためたものです。昭和18年1月に「主婦の友社」にて『米百俵』は発表され、同じ年の6月に東京劇場で上演されています。

さらに、同じ6月に新潮社から書籍で出版され、この故事が注目され、多くの人に知られるようになったのです。昭和17年には「小林虎三郎の功績について」ラジオ放送で講演を行っています。

漫画版『君たちはどう生きるか』など内容が、子供でも理解しやすいように、再編集されたものが多く出版されています。現代社会の大きな問題となっている「いじめ・差別」「勇気・学問」などについて、深く優しく説明しながら、改善の道を一緒に模索するような書籍です。

1937年初版は、吉野源三郎と連名で出版されています。以前から親交のあった吉野源三郎は、当時失業中だったので、山本有三が編集者として迎え入れ、二人で作り上げた作品として連名で出版されたのです。

大正末期から読み継がれている山本有三の著書は、現代人も多く抱えている悩み、生きる意味などに寄り添い考えさせられる秀作が多くあります。子どもにすすめたい著書も多いですが、大人も原点を見つめ直す機会になるような作品ですので、改めて読んでみるのをおすすめします。また下記の記事も参考にしてみてください！