渡辺淳一のおすすめ小説10選|作風や代表作などを詳しく解説

渡辺淳一という小説家をご存知ですか。しなやかなタッチで描きあげるラブストーリーは、芸術的かつ官能的。男女の恋愛や性愛を、これほどまでに上品に美しく描ける小説家は他にはいないのではないでしょうか。

昭和から平成にかけての時代を歩んだ渡辺淳一は、現在にもたくさんの軌跡を残しています。この記事ではそんな渡辺淳一の小説の魅力やおすすめの選び方をたっぷりご紹介します。

医師ならではの視点で見る医療現場や、究極の純愛を巧みに描く作風で人気の渡辺淳一ワールドは、一度足を踏み入れたらなかなか抜け出せなくなることでしょう。北海道が生んだ文豪が生み出す文学の魅力を堪能してくださいね。

渡辺淳一は北海道で生まれ、医師、小説家としての人生をスタートさせました。日本を代表する小説家として活躍した彼はどんな人生を歩んだのか。渡辺淳一の生涯を追ってみましょう。

渡辺淳一は1933年に北海道の空知郡砂川町（現在の上砂川町）で生まれました。その後、高校教師だった父親の仕事の都合で札幌市に移り住みます。中学生の頃、国語教諭であった文学者、中山周三の影響で文学に関心を持つようになったそうです。また、高校時代の初恋の相手だった同級生の死を経験、この経験がのちに発表された『阿寒に立つ』の誕生のきっかけになりました。

高校卒業後は北海道大学理類に進み、その後札幌医科大学医学部に進学。医療の道を歩み始めます。整形外科医を目指して勉強に励む傍ら、詩人としても活躍した河邨文一郎が部長を務める医大文学部にも所属し、文学にも力を注いでいきました。

整形外科学を専攻し、26才の時に医師国家試験に合格。その後札幌医科大学助手、整形外科教室講師を勤めながら、平行して執筆活動を続けます。母親の死をきっかけに書かれた『死化粧』が芥川賞候補に選出されました。その後も作品を発表し続け、少しずつ世に名前が知られるようになっていきます。

『小説心臓移植』が、大学で行われた日本初の心臓移植手術に疑問を呈する形となり、そのことをきっかけに渡辺淳一は大学を去ります。退職後は東京に活動拠点を移し、執筆に専念。「大学を辞めたことは間違っていたのではないか」そんな不安の中書き続けた結果、昭和45年に『光と影』が直木賞を受賞。以来次々にヒット作を生み出します。主に医学や恋愛をテーマにし、80才で亡くなるまで作品を書き続けました。

渡辺淳一の作品といえば、失楽園を思い出す人が多いでしょう。ダブル不倫をテーマに、中年男女の性愛を大胆に描いたこの作品は、ドラマ化、のちには映画化もされ、大きな話題になりました。不倫を「失楽園する」と表現することがブームにもなり、1997年の流行語大賞にも選ばれました。

その他にも渡辺淳一の作品はたくさんあります。医療、恋愛などジャンルもさまざま。代表作を中心にチェックしていきましょう。

総理大臣寺内正毅をモデルにしたとされている作品。医師のきまぐれによって運命を大きく変えられてしまった2人の人生を「光と影」に表されています。怒り・苦しみ・妬みなど人の感情がリアルに表現されており、どうにもならない人生の不条理に感情を掻き立てられます。医師ならではの観点で描かれた、渡辺淳一ならではの作品です。

女性が蔑視されていた時代に、医学の道を志す、ひとりの女性の人生を描いた物語。日本初の女性医師、荻野吟子さんがモデルとなっています。逆境を乗り越え、夢のために並々ならぬ努力を続ける主人公の姿には勇気をもらえます。女性にはもちろん、男性にもぜひ読んでいただきたい作品です。

ドラマで中居正広さんが主演をつとめたことが記憶にも新しい『白い影』の原作。医療がテーマですが、サスペンスの要素もあり、少しずつ明らかになっていく事実にどんどん引き込まれていきます。冷酷でどこかミステリアスな主人公、直江も魅力的です。生きることの意味、命の尊さについて考えさせられます。

黄熱病の研究者として知られる野口英世の伝記小説。教科書などで書かれている野口英世の姿と真実の姿のギャップに衝撃も受けますが、左手のハンディにも負けず、努力を重ね成功をつかむ主人公の姿は尊敬に値します。野口英世のだらしなさや破天荒さを大々的にを描きながら、最後にはやはりすばらしい人物だと思わせてくれる、渡辺淳一の筆力も感じさせる作品です。

渡辺淳一の作品は、エッセイもおすすめです。考え方や人物像が垣間見える作品が多いので、渡辺淳一ってどんな人なんだろう？と気になったらぜひエッセイを読んでみましょう。エッセイの代表作『鈍感力』は当時小泉首相が引用したことで話題にもなり、流行語にノミネートされました。この作品により、楽に生きられるようになった、という声も多く寄せられています。

たくさんあるジャンルの中から、渡辺淳一の代表的なジャンルである評伝・医療・恋愛に分けて、小説の魅力をご紹介します。

渡辺淳一の評伝作品は、野口英世の人生を描き、吉川英治文学賞にも輝いた『遠き落日』が有名です。他にも白河法皇の恋愛を描いた『天上紅蓮』や女性医師、荻野吟子の人生を書いた『花埋み』など、実際に存在した歴史的人物をモデルにした作品が数多くあります。事実を乱すことなく鮮やかに描き切る手法はさすがです。

医療現場を題材にした小説は、渡辺淳一の得意分野ともいえるでしょう。医師としての経験を生かした描写は、リアリティがあり、人の心を惹きつけます。医療というテーマゆえ、生と死など重い内容が多いですが、柔らかな表現が多く読みやすいのも渡辺淳一の作品の魅力です。また、医療と恋愛が融合した作品も多くあります。

渡辺淳一といえばやはり恋愛小説。代表作である『失楽園』をはじめ『化身』や『孤舟』など中年男性を主人公にしたストーリーが多く、自身を重ね合わせているような雰囲気も伺えます。また、官能的なシーンが多いことでも有名ですが、渡辺淳一が描く男女のシーンは美しく、しっとりと上品に描かれており、女性でも読みやすいです。大人のラブストーリーを楽しみたい方は、ぜひ読んでみてください。

渡辺淳一の作品でドラマ化されたものはたくさんあります。中でも医療サスペンス『雲の階段』は1983年、2013年と2度にわたってドラマ化され、さらに韓国ドラマにもなったことで話題を集めました。『無影燈』を原作とした『白い影』も田宮二郎、中居正広によって2度ドラマ化されています。

渡辺淳一の小説で映画化されたものは『失楽園』『愛の流刑地』などがありますが、『化身』は黒木瞳の初主演作品としても有名です。野口英世の人生を描いた『遠き落日』も1992年に映画化されています。どれも時代を超える名作で、現代にも受け継がれています。

渡辺淳一は、80才で生涯に幕を閉じましたが、死後も文学界にたくさんの軌跡を残してます。2015年には文学賞のひとつとして渡辺淳一文学賞が発足。受賞者には賞金200万円が贈呈されることもあり、文学者たちの目標となっています。

また、渡辺淳一の故郷である札幌には渡辺淳一文学館が創設され、彼の生涯を知ることができる場所として今もなお多くの人が訪れています。

渡辺淳一の小説の人気は国内にとどまらず、お隣中国でも絶大な人気を誇りました。彼の名を中国で最も知らしめたのは、やはり『失楽園』だったそうです。中国では日本情愛大使と呼ばれ、その人気は無断出版を度々引き起こすほどでした。また、渡辺淳一の訃報の直後は、中国のTwitterと言われるウェイボーでも死を悼む声が多数寄せられました。

文学を愛し、多くの軌跡を残した渡辺淳一の活動は、死後10年近くたった今でも、たくさんの人に影響を与えています。のんびりと読書を楽しみたい夜は、渡辺淳一の魅力に浸ってみませんか？今まで知らなかった、新しい「何か」を見つけられるかもしれませんよ。

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