宮尾登美子の小説おすすめ10選｜代表作や人気の自伝も紹介

宮尾登美子さんの小説は、時代の波に翻弄されながらも強くたくましく生き抜く芯の強い女性を描いたものが有名です。作品の主題は「女性」で、実在の歴史上の女性だけでなく、花柳界の女性なども描いていて、女性を中心にファンが多い作家です。

調査や取材に一切手を抜かないので、宮尾登美子さんの小説はどれも緻密な構成になっているのも特徴です。また、歴史上の人物のそれまで作り上げられてきたイメージなどを覆すような作品も発表しています。

自身の生家や育ちなどを小説にするのを最初は避けていた宮尾さんでしたが、自伝的四部作の第1作目となる『櫂』は太宰治賞を受賞し、宮尾登美子の名を世の中に知らしめる出世作となりました。

宮尾登美子さんは、高知の遊郭で芸妓紹介、いわゆる女衒を営む父の元に誕生しました。母は女義太夫でしたが、12歳で父母が離別した後、父に引き取られ成長しました。1948年に初めての小説「村芝居」を投稿した後、本格的な文筆活動を開始したのは1962年です。

『連』で1963年に直木賞候補となった後、夫と離婚し女性誌のライターとして活動。1972年に自伝的小説『櫂』を執筆を契機に作家として花開き、その後直木賞をはじめ、さまざまな文学賞を受賞した日本を代表する作家の一人です。

宮尾登美子さんの小説を読んだことはなくても、大河ドラマ「篤姫」をご覧になった方も多いのではないでしょうか。この「篤姫」の原作が宮尾登美子さんの代表作ともいえる『天璋院篤姫』です。幕末から明治にかけて、世の中が大きく変わろうとしていた時代を、特殊な場所である大奥を生き抜いた女性を力強く描きました。

大河ドラマで篤姫を演じたのは宮崎あおいさんでしたが、透明感がありながらも芯の強い女性は宮尾作品の姫君そのものを見るようで、原作も人気を博しました。

宮尾登美子さんの作品の特徴として、歴史上に実在した人物をモデルにして描いた小説があります。たとえば11代目市川團十郎の妻がモデルの『きのね』、後水尾天皇の皇后となり、明正天皇の生母となった徳川和子がモデルの『東福門院和子の涙』などがあります。

歴史上の人物を主人公とする場合は、可能な限りその人物を知っている人物に取材したり資料を読み込んで執筆するほど。史実から逸脱した部分もありますが、取材に裏打ちされた内容は説得力ある世界を描き出しています。

どれから読めばいいのか迷った場合は、受賞作品から選ぶのもひとつの方法です。たとえば、直木賞を受賞した『一絃の琴』は幕末から明治にかけて、一絃琴をめぐる2人の女性を描いた物語です。テレビドラマ化もされた本作は、長編時代小説として人気を得ました。

また吉川英治文学賞を受賞した『序の舞』は、女流画家・上村松園の生涯をモデルにして描かれた小説です。芸術を極めようとする女性が、明治を強く生き抜くさまを描いています。

ドラマや映画の原作として選ばれ、映像化された作品から選ぶのも選び方のひとつです。大河ドラマの原作にもなった『天璋院篤姫』『義経』、そのほかにも『鬼龍院花子の生涯』や『天涯の花』などがあります。

映像で見ると、より時代背景などがわかりやすいので、小説の世界により浸りやすくなります。激動の時代を生き抜くヒロインに感情移入して思い入れも強くなり、同じ時代を共に生きているような気持ちになれます。

宮尾登美子さんは最初は自身の生まれや育ちを卑下していたため、生家について書くことを避けていました。しかし、自伝小説として『櫂』で太宰治賞を受賞後、『朱夏』『春燈』『仁淀川』と自伝的四部作を発表し、高知の花街を生きる女性を通して、自らの生涯を描きました。

また着物について描いたエッセイなどもあり、これらを読むことで、作家宮尾登美子さんの内面に触れることができます。より深く宮尾登美子さんを理解したい場合におすすめです。

宮尾登美子さんは徹底した取材によって小説を描きます。たとえば11代市川團十郎の妻がモデルになった『きのね』を描く際には、子どもである12代市川團十郎をとりあげた産婆を見つけ出し、聞き取り調査まで行っています。

歴史上の人物を描く際にも資料を徹底して調べて描くため、宮尾登美子さんの小説の登場人物は確かにその時代を生き抜いていたさまが伝わります。世界観のリアルさは宮尾登美子作品の大きな特徴なので、ぜひ味わって見てください。

時代に翻弄されながらもたくましく生きる女性が活躍する宮尾登美子さんの小説。花柳界の厳しさの中に懸命に生きる女性や、芸術を極めようとあがく女性など、どんな困難にも立ち向かっていく様子には憧れの気持ちを抱く読者も多くいます。ぜひ宮尾登美子さんの小説を読んで、芯の強い女性が生き抜くさまに魅了されてください。